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セールアンドリースバックとは?会計処理や利用するメリット・デメリットを解説
住み続けられるリースバック|AG住まいるリースバック
リースバックとは、ご所有の不動産を売却しても、
新たな所有者との賃貸契約を結ぶことで、
賃料を支払いながら引き続きその不動産に
住み続けることができます。
また、将来的に
買い戻しができる点も魅力のシステムです。
更新日:2025.09.30

リースバックは個人だけでなく、事業を営む個人事業主や企業が利用するケースもあります。売却して資金を確保しながら不動産をそのまま使い続けることができ、資金繰りに役立つためです。
ただし、リースバックの会計処理は特殊なので、きちんと理解したうえで実施しなければなりません。本記事では、リースバックの会計処理について解説します。リースバックの会計処理上のメリットや注意点も紹介するため、ぜひ参考にしてください。
リースバックをご検討の方へ
セール・アンド・リースバック取引とは、企業が所有している資産(主に不動産や設備)を一度売却し、その後に売却先から同じ資産をリースという形で借り受け、引き続き使用する取引のことです。
この取引を活用することで、企業は資産を手放しながらも業務に必要な資産を使い続けられるうえ、売却によって得た資金を資金繰りや新規投資に充てることが可能になります。
セール・アンド・リースバック取引についてより詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
セール・アンド・リースバック取引のメリット・デメリットは、主に以下が挙げられます。
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
・資産をオフバランス化できる ・コストを削減できる ・調達した資金を自由に利用できる ・経営の柔軟性が増す ・資産を継続的に使用できる |
・リース料を継続的に支払う必要がある ・資産価値が減少する可能性がある ・常の売却のほうが高く売れる可能性がある ・改修や建て替えに制限がかかる |
メリット・デメリットの影響度は、企業の財務状況や経営戦略によって大きく異なります。
たとえば、資金繰りの改善を急ぐ企業にとっては、資産売却によって得られる現金の即時確保が大きなメリットになります。
いっぽうで、長期的に資産を所有していたほうが収益性が高い場合や、物件の改修・再開発の自由度が求められる場合は、デメリットのほうが重く感じられることもあります。
また、会計上の影響やリース契約条件(リース期間・中途解約の可否・リース料の総額など)によっても、実質的なコスト・利益は大きく変動します。
「資金を調達できるから」と安易に判断するのではなく、資産の価値、今後の経営計画、コスト構造を総合的に評価したうえで導入可否を検討することが重要です。
リースバックの会計処理をする場合、2種類のリースバック取引について知る必要があります。売買もしくは賃貸借取引の会計基準をもとに2種類に分けられているため、それぞれの特徴を確認しましょう。
ファイナンス・リース取引は、不動産を売買した場合と同様に会計処理をする取引形態です。リース会社が立て替えた不動産の購入代金を、リース料金として分割払いする形の会計処理です。
ファイナンス・リース取引として扱うのは、解約不能かつフルペイアウトという条件を満たすリースバック取引のみです。そして、契約期間中に借主から中途解約を申出ることができない取引が、解約不能のリースバック取引として扱われます。
フルペイアウトとは、売却したあとも不動産を使い続けることで経済的な利益を享受でき、かつ、不動産を使用する際に発生する金利や固定資産税などの費用を負担するリース取引です。
オペレーティング・リース取引は、先述のファイナンス・リース取引に該当しないリースバック取引すべてが対象です。解約不能ではなく、フルペイアウトの条件を満たさないリースバック取引が、オペレーティング・リース契約として会計処理されます。
ファイナンス・リース取引は売買契約と同様の形で会計処理されますが、オペレーティング・リース契約は賃貸借取引と見なされるのが特徴です。
リースバックが会計処理上2種類に分類されると理解したうえで、それぞれの会計処理の流れを確認しましょう。
ファイナンス・リース取引に該当するリースバックの場合、会計処理は物件の売却時点と物件のリース開始時点に分けて記帳します。
それぞれの会計処理方法について、具体的に確認しましょう。
まずは、物件売却時の会計処理を解説します。たとえば、期首に取得価格3,000万円の不動産を売却し、間接控除法によって1,800万円の減価償却をしているとします。
不動産の売却により当座預金へ900万円が入金された場合の記帳は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 900万円 | 建物 | 3,000万円 |
| 減価償却累計額 | 1,800万円 | ||
| 固定資産売却損 | 300万円 | ||
| 長期前払費用 | 300万円 | 固定資産売却損 | 300万円 |
物件の売却損額は、長期前払費用として処理します。もし売却益が出た場合は、長期前受収益として処理してください。
物件の売却損額を長期前払費用として処理する以外は、一般的な不動産売却時と変わらない方法で記帳するのが特徴です。
続いて、物件リース時の会計処理です。たとえばリース料金は18万円で契約期間は5年、総リース料金の割引現在価値は870万円としましょう。物件のリース開始時点の会計処理は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| リース資産 | 870万円 | リース債務 | 870万円 |
| リース債務 | 18万円 | 当座預金 | 18万円 |
基本的にリース料金は前払いなので、リース開始時点では支払利息が生じません。2回目以降の会計処理では、借方科目で支払利息も計上する必要があります。
オペレーティング・リース取引でも会計処理は売却時とリース時に分けますが、それぞれ個々の契約として扱うことになります。物件売却時とリース時の会計処理を確認しましょう。
オペレーティング・リース取引でも、わかりやすいようにファイナンス・リース取引と同様の条件を例として設定します。
期首に取得価格3,000万円の不動産を売却し、間接控除法によって1,800万円の減価償却をしているとしましょう。不動産の売却により当座預金へ900万円が入金された場合の記帳は、以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 900万円 | 建物 | 3,000万円 |
| 減価償却累計額 | 1,800万円 | ||
| 固定資産売却損 | 300万円 | ||
オペレーティング・リース取引の仕訳は、一般的な資産売却の仕訳と同じです。
オペレーティング・リース取引のリース料金は、ファイナンス・リース取引よりも安い金額で考えましょう。
リース料金は15万円で契約期間は5年、物件のリース開始時点の会計処理は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| リース料 | 15万円 | 当座預金 | 15万円 |
オペレーティング・リース取引のリース時の会計処理は、ファイナンス・リース取引に比べてシンプルです。リース料金の支払いに合わせて記帳してください。
2024年9月13日に、新リース会計基準が公表されました。2016年に国際的な財務報告基準や会計基準が新たに公表され、日本の既存の会計基準と差が生じていたため、今回の新リース会計基準が公表された形です。
2027年4月1日以降に開始する事業年度では、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の会計処理が区別されなくなります。
つまり、オペレーティング・リース取引でもファイナンス・リース取引と同様、リース資産とリース負債を貸借対照表に計上し、減価償却費や支払利息を損益計算書に計上しなければなりません。
これまでのオペレーティング・リース取引に該当し、貸借対照表に計上していなかった取引がある場合、新リース会計基準適用後は貸借対照表の資産や負債の計上額が大きくなります。その結果、総資産利益率や自己資本比率などの財務指標が悪化する企業も出てくるでしょう。
国際的な基準と整合性が取れる会計処理ができるようになるのはメリットですが、変更を反映し正しく会計処理をしなければならないので、今から十分な注意が必要です。
リースバックを利用するメリットは多数ありますが、会計処理におけるメリットも存在します。以下では、会計処理におけるリースバックのメリットを具体的に確認しましょう。
リースバックを利用すれば、賃料を経費に計上できます。
リースバックは、所有している不動産を売却したあとも賃料を支払いながら不動産を使い続けられるサービスです。賃料は経費として計上可能で、利益を圧縮できるため、納税額を抑えられます。
リースバックの利用で財務状況が改善するのもメリットです。
所有していた不動産をリースバックにより売却すると、貸借対照表に記載されず、オフバランス化されます。自己資本比率や総資産利益率などの財務指標も改善され、企業価値が高まり、金融機関からの融資を受けやすくなるでしょう。
また、リースバックを利用すれば不動産の使用を続けられますが、売却益が発生するため、財務状況が改善します。借入金がある場合も、売却益を返済に充てることができます。
リースバックでは不動産を売却するため、不動産の所有に伴うリスクを回避できます。
不動産の価値が下落すると、会計処理上マイナスになるため、所有に伴うデメリットが大きくなります。また、不動産が老朽化したり破損したりすると修繕費が必要になるため、支出が増えることもあるでしょう。
リースバックを利用して不動産を売却して使い続ければ、所有権はリースバック事業者に移ります。不動産の価値が下落しても会計処理でマイナスになることはなく、ビルの管理費や修繕積立金などの費用も一般的にリースバック事業者が負担するため、損失を被るリスクを抑えられるでしょう。
リースバックを利用して会計処理をすれば、節税や財務状況の改善、リスク回避などさまざまなメリットが期待できます。
リースバックの会計処理をする際は、締結したリースバック契約がどの会計処理区分に該当するかを確認しましょう。
先述のとおり、現状のリースバックの会計処理はファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かによって記帳の方法が異なります。取引を自由に選択することはできないため、条件を確認して正しく経費計上することが大切です。
転リース取引があった場合は、変更を会計処理に反映する必要があります。
転リース取引とは、リースバックによって借りている不動産を第三者に貸す取引です。例えば、借りている不動産を子会社に貸す際は、転リース取引となります。
転リース取引をした場合、自社に賃料が入ってくるため、会計処理では賃料の受取額と支払額を差し引かなければなりません。生じた差額は手数料収入として計上しなければならないので、忘れずに処理をしましょう。
リースバックの会計処理では繰延処理が必要になるケースがあるため、忘れずに処理しましょう。
リースバックでは不動産の売却時に損益が発生するため、長期前払費用や長期前受収益として繰延処理をしなければなりません。ただし、以下のすべての条件に当てはまるリースバック取引では、繰延処理は不要です。
リースバックの会計処理をする際は、新会計基準のチェックを怠ってはいけません。
2024年9月13日に新リース会計基準が公表されました。2027年4月1日以降に始まる事業年度から新基準が適用され、対象の会社は会計基準が変更になります。
新しい基準の公表がないか確認し、正しく会計処理をすることが大切です。
リースバックを利用して正しく会計処理をすれば、節税や財務状況改善、不動産リスク回避などのメリットがあります。リースバックの会計処理をする際は、2種類のリースバック取引を理解し、適切な方法で記帳しなければなりません。
リースバックの会計処理は会計基準に則って行われるため、最新情報を確認して、適切な方法を理解したうえで、リースバックを検討しましょう。


