リースバックとは、ご所有の不動産を売却しても、
新たな所有者との賃貸契約を結ぶことで、
賃料を支払いながら引き続きその不動産に
住み続けることができます。
また、将来的に
買い戻しができる点も魅力のシステムです。
セールアンドリースバックとは?会計処理や利用するメリット・デメリットを解説
更新日:2024.02.08
自社の所有する不動産を利用した資金調達法に「セールアンドリースバック」があります。
セールアンドリースバックは、金融機関や公的資金を介さずにまとまった資金を準備する方法として広く普及しているため、興味を持たれる方も多いかもしれません。しかし、会社の所有する大切な資産を扱う仕組みのため、メリットやデメリットを理解したうえでのご利用が大切です。
本記事では、企業の資金調達法として知られるセールアンドリースバックの概要、実施した際の会計処理、メリットやデメリットなどをわかりやすく解説します。
リースバックをご検討の方へ
もくじ
セールアンドリースバックとは?
セールアンドリースバックとは、会社の所有する不動産をリースバック業者に売却して賃貸料を支払うことで、同じ不動産をリース(賃貸借)物件として借り受ける取引です。単にリースバックと呼んだり、セールリースバックと呼ばれたりする場合もあります。
まとまった資金を調達する方法として、不動産分野で広く普及しており、リースバック業者によりルールは異なりますが、原則として物件のリース期間や売却で得た資金の利用目的を自由に決められます。
セールアンドリースバックの目的
セールアンドリースバックの主な目的は、不動産の売却による資金調達です。企業の所有する資産の中でも特に大きな不動産の売却となるため、まとまった資金の準備に適しています。
同じ不動産を引き続き利用しながら物件の売却代金を手にできる点が、一般的なリース契約とは大きく異なります。
ほかにも、不動産の所有や管理にまつわる事務手続きや会計処理の負担軽減も期待されます。
セールアンドリースバックの会計処理
セールスアンドリースバックは不動産の売買ではなく、リース契約を含んだ取引です。そのため会計処理には、通常のリース取引と同じように売却時とリース時のどちらの処理も必要です。
ただし、リース取引にはファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分ける必要があり、オペレーティング・リース取引に該当する場合には売買処理は発生しません。
- ファイナンス・リース取引:解約不能期間または金額が一定の基準を満たし、フルペイアウトと判断される取引
- オペレーティング・リース取引:ファイナンス・リース取引に該当しない取引
セールアンドリースバックの流れ
セールアンドリースバックは、通常、リースバック業者への問合せや物件の仮査定から始まります。
本申込み前に問合せなどのステップを踏む目的は、申込みの可否のほか、不動産の価値の確認、希望する借入額や賃貸借期間などの実現性を確認するためです。
問合せや仮査定の結果が出れば具体的な契約内容を相談し、条件が合えば売買契約と賃貸契約を交わして、物件の売却代金を受取ります。
セールアンドリースバックのメリット
セールアンドリースバックを活用すると、次のようなメリットが期待されます。
資金調達の手段に使える
セールアンドリースバックをすると、不動産の売却代金を得られます。事業の運転資金のほか、納税準備など、まとまった資金を幅広い用途に使えます。
企業の資金調達法には金融機関からの借入れや公的資金もありますが、業績悪化などから利用がむずかしい場合もあるかもしれません。その際にも、セールアンドリースバックは役立ちます。
また一般的な融資に比べ、申込みから契約や資金の入金までがスムーズな点も特徴です。
不動産管理の負担を減らせる
自社ビルの所有は会社のステータスを上げるなどの利点もありますが、同時に不動産の価値が下落するリスクや、事務処理や管理業務などの手間や負担、コストを抱えます。
具体的には、不動産にかかる固定資産税や保険の管理・支払い、設備の減価償却、不要になった際の処分などです。
しかし、セールアンドリースバックを利用すると、賃貸として物件を使い続けながらこうした手間や負担をリースバック業者に任せられます。
不動産を引き続き利用できる
不動産の売買契約とリース契約が同時にできるセールアンドリースバックなら、空白期間を置かず、同じ不動産を継続利用できます。
リース料(賃貸料)を払い続ければ事務所を移転する必要もなく、これまでと変わらぬ環境で事業を継続できます。
キャッシュフローが改善される
セールアンドリースバックのメリットには、B/S(バランスシート、貸借対照表)のオフバランス化やキャッシュフローの改善を見込めます。
不動産を売却すると固定資産の切り離しで負債が減ってB/Sがスリム化し、資本効率が向上します。また、売却で得た資金で借入金を返済すれば、キャッシュフローが安定するでしょう。
リース料(賃貸料)は損金として経費計上できるため、会計上のメリットもあります。
将来的に不動産を買い戻せる場合がある
一般的な不動産売買にはないメリットとして、セールアンドリースバックで売却した不動産は、将来的に買い戻せます。買い戻しには、リースバック業者と交わす契約に「買い戻し特約」を付帯するなど適用条件があるため、契約前に確認しましょう。
ただし、買い戻しの期間や金額が契約時に指定されている場合も多いので、買い戻しがメリットになるかどうか冷静な判断が必要です。
セールアンドリースバックのデメリット
メリットの多いセールアンドリースバックですが、状況によってはデメリットになる場合もあります。ここではデメリットを4つ紹介します。
リース料(賃貸料)を定期的に支払う
セールリースバックをすると、不動産の所有権がリースバック業者に移るため、物件を利用し続けるにはリース料を支払わなければなりません。
リース料は、不動産の購入代金のほかに物件の管理費などが加味されているため、一般的な賃貸料に比べるとやや割高の傾向です。不動産の所有にかかる負担は減るものの、経営状況によってはリース料の支払いが負担になる可能性が考えられます。
不動産の売却代金が相場より低くなりやすい
不動産市場で一般的な売買をするのに比べると、セールアンドリースバックでの不動産売却代金は相場より低くなりやすいとされます。
リースバック業者は所有権を購入するだけで不動産を自由に使えません。そのため、リースバック期間終了後の価値を考慮した金額を設定するためです。
また、資金調達のために現金化を急いでいる場合には、納得できる売却金額での契約に至らない可能性も考えられます。
契約が長くなるほど損になる可能性がある
まとまった資金調達に向いているセールアンドリースバックですが、リース期間が長くなるほど損になる可能性があります。
セールアンドリースバックの契約で、リース料が相場より割高、物件の売却代金は割安であれば、リース期間が長くなるほど損失が膨らみます。それにより、予定していた買い戻しがむずかしくなる場合もあります。
物件の所有権がリースバック業者に移る
セールアンドリースバックを契約すると、不動産の所有権がリースバック業者に移ります。リース料を支払ってこれまでと変わりなく物件を利用できても、所有権がない状態である点に注意が必要です。
たとえば、設備などの改修や設置には、所有権のあるリースバック会社の同意を得なければなりません。場合によっては、ビジネスに支障が出る恐れもあります。また、オーナーチェンジした場合、リース契約の更新を拒まれるかもしれません。
セールアンドリースバックが向いている企業は?
セールアンドリースバックの活用は、次のような企業に向いています。
- 業績悪化などから金融機関や公的制度の融資を利用できず、まとまった資金の調達方法を探している企業
- 借入金(負債)を増やさずに、運営資金や設備投資の費用を準備したい企業
- 経営状況によっては将来的に不動産の買い戻しを検討している企業
セールアンドリースバックでは不動産の評価が重視されるため、業績や信用力に重きを置く金融機関や公的制度からの融資に比べると、資金調達しやすい方法です。
また、得られる資金は借入金ではなく不動産の売却代金のため、財務状況に悪影響となりません。
セールアンドリースバックは納得のいく条件での契約が大切
セールアンドリースバックは、リースバック会社に不動産を売却して、リース料を支払うことで引き続き同じ物件を利用できる取引です。資金調達法のひとつとして、多くの企業で利用されています。
用途を問われずまとまった資金を用意できる、不動産の管理やコストから解放されるなどさまざまなメリットがありますが、大切な資産を扱う取引なのでデメリットも考慮したうえで、利用を検討しましょう。
申込み前の問合せや相談でセールアンドリースバックの必要性を十分に検討し、納得できる条件で契約を進めることが大切です。
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- 監修者:熊谷 正和
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- プロフィール:
- 2005年ファイナンシャルプランニング事務所「ライフアート・コンサルティング株式会社」を開業、セミナー講師や、マネーコンサルタントとして活動中。開業以来個人のマネー相談を中心に、2,500世帯を超える相談対応を経験。豊富な経験を武器とした、ライフプラン相談を得意としています。
- 資格情報:1級FP技能士(CFP資格者)
- HP:http://www.lifeartfp.jp