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リースバックの会計処理はどのようにする?仕訳方法や会計上のメリット、注意点を解説
住み続けられるリースバック|AG住まいるリースバック
リースバックとは、ご所有の不動産を売却しても、
新たな所有者との賃貸契約を結ぶことで、
賃料を支払いながら引き続きその不動産に
住み続けることができます。
また、将来的に
買い戻しができる点も魅力のシステムです。
更新日:2025.08.27
自社の所有する不動産を利用した資金調達法に「セールアンドリースバック」があります。
セールアンドリースバックは、金融機関や公的資金を介さずにまとまった資金を準備する方法として広く普及しているため、興味を持たれる方も多いかもしれません。
しかし、会社の所有する大切な資産を扱う仕組みのため、メリットやデメリットを理解したうえでの利用が大切です。
本記事では、企業の資金調達法として知られるセールアンドリースバックの概要、実施した際の会計処理と仕訳例、メリットやデメリットなどをわかりやすく解説します。
リースバックをご検討の方へ
セールアンドリースバックとは、会社の所有する不動産をリースバック事業者に売却して賃貸料を支払うことで、同じ不動産をリース(賃貸借)物件として借り受ける取引です。単にリースバックと呼んだり、セールリースバックと呼ばれたりする場合もあります。
まとまった資金を調達する方法として、不動産分野で広く普及しています。リースバック事業者によって契約条件は異なりますが、原則として物件の売却資金の利用目的には制限がありません。
セールアンドリースバックの主な目的は、不動産の売却による資金調達です。企業の所有する資産のなかでも特に大きな不動産の売却となるため、まとまった資金の準備に適しています。
また、まとまった資金を調達しつつ、同じ不動産を引き続き利用できる点が、一般的なリース契約との大きな違いです。
ほかにも、不動産の所有や管理にまつわる事務手続きや会計処理の負担軽減も期待されます。
まとまった資金を調達する方法として、金融機関からの借入れが挙げられます。
ただし、必要な資金を金融機関から借りる「借入れ」に対し、「セールアンドリースバック」は不動産を売却し、リース物件として借りる取引であり、根本的な仕組みが異なります。
項目 | セールアンドリースバック | 金融機関からの借入れ |
---|---|---|
調達資金 | 売却代金 | 借入金 |
調達のしやすさ | 不動産の価値などに左右される | 財務状況や信用力に左右される |
返済 | 不要(リース料の支払いが必要) | 必要(元金+利息) |
利用目的 | 自由 | 申告や制限あり |
貸借対照表への影響 | 資産の減少 | 負債の増加 |
金融機関からの借入れで調達した資金は「借入金」であり、元金に利息を加えて返済が必要です。
いっぽう、セールアンドリースバックで調達した資金は「売却代金」で、返済の義務はありません。
ただし、売却後はリース料の支払いが発生します。
仕組みや違いを正しく理解し、目的や財務状況、保有する資産などに応じて適切な方法を検討しましょう。
セールアンドリースバックは不動産の売買だけではなく、リース契約を含んだ取引です。そのため会計処理には、通常のリース取引と同じように売却時とリース時のどちらの処理も必要です。
ただし、リース取引はファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類され、それぞれ会計処理の方法が異なります。
ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けて、借り手側の会計処理を解説します。
ファイナンス・リース取引とは、以下の2つの要件を満たすリース取引です。
解約不能 | リース期間中に契約を解除できないリース取引、またはこれに準ずるリース取引 |
フルペイアウト | 借り手がリース契約に要した資金のおおむね全額をリース料として支払うリース取引 |
セールアンドリースバックで締結するリース契約が「ファイナンス・リース取引」に該当する場合は、不動産の売却とリース契約を一体の取引として処理する点が特徴です。不動産売却時とリース契約締結時に分けて、仕訳例を解説します。
取得価額3,000万円の建物を売却し、900万円が普通預金口座に入金された場合の仕訳は、次のとおりです。減価償却累計額は1,800万円(間接控除法)と仮定します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 900万円 | 建物 | 3,000万円 |
減価償却累計額 | 1,800万円 | ― | ― |
固定資産売却損 | 300万円 | ― | ― |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
長期前払費用 | 300万円 | 固定資産売却損 | 300万円 |
ファイナンス・リース取引に該当する場合、固定資産売却損益を長期前払費用(または長期前受収益)として処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じて費用化(または収益として認識)する点が特徴です。
リース料毎月20万円、リース期間5年、リース料の割引現在価値900万円とした場合、リース契約開始時の仕訳例は次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
リース資産 | 900万円 | リース債務 | 900万円 |
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
リース債務 | 20万円 | 普通預金 | 20万円 |
2回目以降のリース料支払い時には「支払利息」の勘定科目を使用し、元本と区分して利息を計上します。
オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引に該当しないリース取引です。
オペレーティング・リース取引に該当する場合は、不動産の売却と賃貸借契約を別個の契約として扱うため、ファイナンス・リース取引と比べて会計処理が単純です。
オペレーティング・リース取引に該当する場合、売却時は通常の不動産売却と同様の処理を行います。
たとえば、取得価額3,000万円の建物をセールアンドリースバック取引で売却し、900万円が普通預金口座に入金された場合、仕訳例は次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
普通預金 | 900万円 | 建物 | 3,000万円 |
減価償却累計額 | 1,800万円 | ― | ― |
固定資産売却損 | 300万円 | ― | ― |
オペレーティング・リース取引に該当する場合は、リース料支払いのたびに費用として計上します。リース料15万円、リース期間5年間とした場合の仕訳例は、次のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
リース料 | 15万円 | 普通預金 | 15万円 |
セールアンドリースバックを利用する際の一般的な流れは、以下のとおりです。
セールアンドリースバックは、通常、リースバック事業者への問合せや物件の仮査定から始まります。
本申込み前に問合せなどのステップを踏む目的は、申込みの可否のほか、不動産の価値の確認、希望する借入額や賃貸借期間などの実現性を確認するためです。
問合せや仮査定の結果が出れば具体的な契約内容を相談し、条件が合えば売買契約と賃貸借契約を交わして、物件の売却代金を受取ります。
セールアンドリースバックを活用すると、次のようなメリットが期待されます。
セールアンドリースバックをすると、不動産の売却代金を得られます。事業の運転資金のほか、納税準備など、まとまった資金を幅広い用途に使えます。
企業の資金調達法には金融機関からの借入れや公的資金もありますが、業績悪化などから利用がむずかしい場合もあるかもしれません。その際にも、セールアンドリースバックは役立ちます。
また一般的な融資に比べ、申込みから契約や資金の入金までがスムーズな点も特徴です。
自社ビルの所有は会社のステータスを上げるなどの利点もありますが、同時に不動産の価値が下落するリスクや、事務処理や管理業務などの手間や負担、コストを抱えます。
具体的には、不動産にかかる固定資産税や保険の管理・支払い、設備の減価償却、不要になった際の処分などです。
しかし、セールアンドリースバックを利用すると、賃貸として物件を使い続けながらこうした手間や負担をリースバック事業者に任せられます。
不動産の売買契約とリース契約が同時にできるセールアンドリースバックでは、空白期間を置かず、同じ不動産を継続利用できます。
リース料(賃貸料)を払い続ければ事務所を移転する必要もなく、これまでと変わらぬ環境で事業を継続できます。
セールアンドリースバックを利用すると、B/S(バランスシート、貸借対照表)のオフバランス化やキャッシュフローの改善が見込めます。
不動産を売却すると、固定資産の切り離しで負債が減ってB/Sがスリム化し、資本効率が向上します。また、売却で得た資金で借入金を返済すれば、キャッシュフローが安定するでしょう。
リース料(賃貸料)は損金として経費計上できるため、会計上のメリットもあります。
一般的な不動産売買にはないメリットとして、セールアンドリースバックで売却した不動産は、将来的に買い戻せる可能性があります。買い戻しには、リースバック事業者と交わす契約に「買い戻し特約」を付帯するなど適用条件があるため、契約前に確認しましょう。
ただし、買い戻しの期間や金額が契約時に指定されている場合も多いので、買い戻しがメリットになるかどうか冷静な判断が必要です。
メリットの多いセールアンドリースバックですが、状況によってはデメリットになる場合もあります。ここではデメリットを4つ紹介します。
セールアンドリースバックをすると、不動産の所有権がリースバック事業者に移るため、物件を利用し続けるにはリース料を支払わなければなりません。
リース料は、不動産の購入代金のほかに物件の管理費などが加味されているため、一般的な賃貸料に比べるとやや割高の傾向です。不動産の所有にかかる負担は減るものの、経営状況によってはリース料の支払いが負担になる可能性が考えられます。
不動産市場で一般的な売買をするのに比べると、セールアンドリースバックでの不動産売却金額は相場より低くなりやすいとされます。
リースバック事業者は所有権を購入するだけで不動産を自由に使えません。そのため、リースバック期間終了後の価値を考慮した金額を設定するためです。
また、資金調達のために現金化を急いでいる場合には、納得できる売却金額での契約に至らない可能性も考えられます。
まとまった資金調達に向いているセールアンドリースバックですが、リース期間が長くなるほど損になる可能性があります。
セールアンドリースバックの契約で、リース料が相場より割高、物件の売却代金は割安であれば、リース期間が長くなるほど損失が膨らみます。それにより、予定していた買い戻しがむずかしくなる場合もあります。
セールアンドリースバックを契約すると、不動産の所有権がリースバック事業者に移ります。リース料を支払ってこれまでと変わりなく物件を利用できても、所有権がない状態である点に注意が必要です。
たとえば、設備などの改修や設置には、所有権のあるリースバック事業者の同意を得なければなりません。場合によっては、ビジネスに支障が出る可能性もあります。また、オーナーチェンジした場合、リース契約の更新を拒まれるかもしれません。
セールアンドリースバックの活用は、一般的に次のような企業に向いています。
セールアンドリースバックでは不動産の評価が重視されるため、業績や信用力に重きを置く金融機関や公的制度からの融資に比べると、資金調達しやすい方法です。
また、得られる資金は借入金ではなく不動産の売却代金のため、財務状況に悪影響となりません。
セールアンドリースバックは、リースバック事業者に不動産を売却して、リース料を支払うことで引き続き同じ物件を利用できる取引です。資金調達法のひとつとして、多くの企業で利用されています。
利用目的を問わずまとまった資金を用意できる、不動産の管理やコストから解放されるなどさまざまなメリットがありますが、大切な資産を扱う取引なのでデメリットも考慮したうえで、利用を検討しましょう。
申込み前の問合せや相談でセールアンドリースバックの必要性を十分に検討し、納得できる条件で契約を進めることが大切です。