

リースバックとは、ご所有の不動産を売却しても、
新たな所有者との賃貸契約を結ぶことで、
賃料を支払いながら引き続きその不動産に
住み続けることができます。
また、将来的に
買い戻しができる点も魅力のシステムです。
リースバックの退去時に原状回復は必要?費用の目安や修繕費との関係も解説
更新日:2025.02.26

リースバックで住んでいる家を退去するとき、原状回復が必要かどうか気になっている方もいるのではないでしょうか。
リースバックでは、引き続き住み慣れた自分の家に住み続けられる一方で、家の所有権はリースバック事業者に移っています。そのため、退去のときは契約書の内容次第で原状回復が必要です。
本記事では、リースバックと原状回復の関係や退去者(借主)が負担する内容などを解説します。リースバックを検討している方やリースバック住宅から退去を予定している方はぜひ参考にしてください。
リースバックをご検討の方へ
もくじ
原状回復とは
一般的に、原状回復とは「借主の故意・過失によって賃貸住宅に生じたキズや汚れなどや、借主が通常の使用方法とはいえないような使い方をして生じた損傷などを元に戻すこと」です。
借主の責任によるものではない損傷や日常生活の中で生じた損耗(通常損耗)、年月の経過による変化や劣化(経年劣化)については、原状回復を行う義務はありません。
原状回復が発生する場合でも、借主が負担する費用は破損部分の補修工事に必要な施工の最小単位に限定されます。たとえば、フローリングの一部を傷つけてしまった場合は、フローリング全面ではなく該当の部分のみの費用が必要です。
また、自然災害をはじめとした不可抗力による損耗や、借主と無関係な第三者がもたらした損耗の原状回復についても、借主は負担する必要はありません。
ただし、貸主と借主の同意があれば、原則と異なる特約を定めることが可能です。特約がある場合は、当該特約の内容に基づいて原状回復の負担を決めます。
借主(賃借人)に特別の負担を課す特約が有効と認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。すべての特約が有効なものとして取り扱われるものではない、という点に留意しましょう。
- 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
- 借主が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
- 借主が特約による義務負担の意思表示をしていること
リースバックで原状回復が必要かどうかは内容次第

リースバックは、リースバック事業者との賃貸借契約に基づいています。住んでいる家を退去するとき、原状回復が必要になるかどうかはリースバック事業者との契約内容次第です。
リースバックの場合、賃貸借契約が終了して退去した後に、家を取り壊したりリノベーションしたりするケースが多く、原状回復が不要となっているケースが一般的です。
ただし、取り壊しやリノベーションの予定がなく、そのまま別の人に貸し出す場合は退去者が原状回復義務を負うことがあります。借主が原状回復義務を負うかどうかは、賃貸借契約書の内容から判断しましょう。リースバックのサービスを提供している事業者ごとに契約内容は異なるため、入居時に確認することが大切です。
なお、借主に原状回復義務が発生する場合、国土交通省のガイドラインに基づいて貸主と借主が負担すべき部分を決めるのが一般的です(東京都にある物件の場合は、都の賃貸住宅紛争防止条例)。
以下に東京都の賃貸住宅紛争防止条例を参考に、貸主負担・借主負担の例を紹介します。
貸主負担 |
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---|---|
借主負担 |
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出典:東京都住宅政策本部「賃貸住宅第4版 トラブル防止ガイドライン」
上表はあくまでも一例で、ほかにも経過年数の考え方や負担単位の定め方などが詳細に掲載されています。リースバックの家を退去するときには、原状回復義務を負うか把握するためにも、ガイドラインに目を通しておくとよいでしょう。
リースバックで原状回復費用の負担が発生するタイミング

原状回復費用は、具体的に契約期間の満了に伴って退去するときや、強制退去時などに発生します。
以下で、具体的なタイミングを見ていきましょう。
契約期間の満了に伴って退去するとき
リースバックでは、賃貸借契約を締結するときに普通借家契約か定期借家契約を締結します。
定期借家契約を締結した場合、原則として更新がありません。契約期間の満了に伴って、借主は退去しなければなりません。ただし貸主・借主の双方が合意すれば再契約することが可能です。
退去するタイミングで、借主として原状回復義務を負うキズや破損がある場合、相応の費用負担が発生します。つまり、定期借家契約の場合は「契約満了日」における状況で、原状回復の有無を判断します。
契約期間の途中に退去するとき
普通借家契約でも定期借家契約でも、契約期間の途中で解約して退去することがあります。一般的な賃貸住宅を退去するときと同じように、途中退去するタイミングで原状回復義務を負うキズや破損がある場合、相応の費用負担が発生します。
なお、一般的にいずれの契約でも、以下のような借主が退去するやむを得ない事情がある場合、途中で解約できることが多いです。
- 勤務先の事情で転勤が必要となった
- 介護施設へ入居することになった
- 両親や親族の介護や子どもの学校事情で引っ越しが必要となった
各契約の具体的な途中解約の可否は、以下のとおりです。
普通借家契約 | 中途解約に関する特約があれば、その定めに従う |
---|---|
定期借家契約 |
|
出典:国土交通省「定期借家制度(定期建物賃貸借制度)をご存じですか・・・?」
賃貸借契約書に借主からの中途解約ができる旨の条項が盛り込まれているケースが一般的ですが、契約時は事前に確認をしましょう。
強制的に退去させられるとき
リースバックの家に住んでいて、貸主(リースバック事業者)に損害を与えたり、モラル的に問題があると判断されたりすると強制的に退去させられることがあります。
強制退去となる場合でも、通常の退去と同様に退去時における部屋の状況に応じて、原状回復費用が発生します。契約違反による解除や強制執行による退去の場合でも、借主としての義務は変わりません。
強制退去になりうる原因としては、以下のような事例が該当します。
- 長期間にわたって家賃を滞納している
- 過剰な騒音
- 過剰な悪臭
- 無断転貸をした
- 無断でペットを飼育した
- 重大な契約違反をした
たとえば、家賃を長期にわたって滞納している場合、以下のような流れで強制退去に至ります。
- 支払いの督促を受ける
- 連帯保証人へ請求が行く
- 状況を放置していると、契約解除通知が送付される
- 貸主により明け渡し訴訟が提起される
- 強制退去が執行される
原状回復の内容
標準的な賃貸借契約書では、建物の損耗について「賃借人の通常の使用により生ずる損耗」「賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗」にわけています。
国土交通省のガイドラインによると、それぞれの費用を負担すべき人は以下のとおりです。
賃借人の通常の使用により生ずる損耗 | 賃借人に原状回復義務がない=貸主負担 |
---|---|
賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗 | 賃借人に原状回復義務がある=借主負担 |
ガイドラインでは原状回復について「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。
基本的に、借主に故意や過失があるかどうか、善管注意義務(善良な管理者の注意義務)を怠ったかどうかが判断のポイントといえるでしょう。
具体的に、ガイドラインを参考に借主が原状回復義務を負わないものと、借主が回復義務を負うものをまとめました。
「原状回復」にあたらない内容(貸主負担) |
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---|---|
「原状回復」にあたる内容(借主負担) |
|
借主に原状回復義務が発生する場合、賃貸期間中の経年劣化を加味して負担すべき金額を計算します。経年劣化とは、時間の経過に伴い自然に生じる劣化や損耗のことで、通常使用によって避けられないものです。
たとえば、壁のクロスやカーペットの耐用年数は6年で、6年を経過すると資産価値が1円となります。6年以上同じ物件に住んでいた場合、壁のクロスやカーペットに関して原状回復義務を負ったとしても、資産価値がなくなっているため費用負担は発生しません(ただし、本来機能していた状態に戻す工事費等の負担が必要なことがあります)。
このように、原状回復の費用負担を判断するときには「貸主と借主のどちらが負担すべきか」「経年劣化によりどの程度価値が損耗しているのか」を考えなければなりません。
原状回復費用の目安
原状回復義務を負うことになった場合、具体的にどの程度の費用を負担するのか気になるものです。必要な原状回復費用を家の場所ごとに目安をまとめました。
キッチン周辺 | 約15,000~25,000円 |
---|---|
水垢・カビ | 約5,000~20,000円 |
トイレ | 約5,000~10,000円 |
床材の汚れ | 約15,000~25,000円 |
床材の張り替え(1㎡あたり) | 約8,000~10,000円 |
壁や天井のキズの修復(1カ所あたり) | 30,000~40,000円 |
汚損や破損の範囲によって費用は前後するため、詳細な金額は専門業者の見積もりが必要です。
なお、原状回復費用は、退去後に貸主や管理会社から請求が来るケースが一般的です。請求を受けたら、「どの場所で、どの程度の費用が必要なのか」「費用の算定根拠はどうなっているのか」を確認しましょう。
リースバックでは修繕費が借主負担になるケースが多い
リースバックでは、通常の賃貸借契約とは異なり、住んでいる期間中に住宅設備が故障しても、借主である自分自身が修繕費用を負担しなければなりません。賃貸借契約書で特約が設けられ、修繕費の負担は、引き続き住んでいた借主が負う旨が定められます。
通常の賃貸借契約では、建物や設備の修繕義務は貸主が負います。たとえば、エアコンや給湯器などの住宅設備が故障したとき、貸主や管理会社に連絡して業者に修理してもらいます。
しかし、リースバックの場合は、同じ人が住み続ける関係上、貸主であるリースバック事業者が不具合の発見や特定をするのが難しく、借主が負担するのが一般的です。
ほかにも、リースバック後は所有権が事業者に移るため、設備を新しく設置する場合にはリースバック事業者の承諾が必要になります。
このように、修繕の必要が生じたときや設備を新しくしたいときは、リースバックならではの注意点があります。
リースバックの原状回復費用を誰が負担するかは契約内容次第
リースバックの家を退去するとき、原状回復費用を誰が負担するかは契約内容次第です。一般的なリースバックでは借主の原状回復義務は発生しませんが、契約内容次第では義務を負う可能性があります。
借主として原状回復義務を負う場合、国土交通省のガイドラインを参考に負担割合を決めます。事前に賃貸借契約書の内容や、ガイドラインを確認しておくとよいでしょう。
安心して同じ家に住み続けるためには、信頼できるリースバック事業者に相談することが欠かせません。AG住まいるリースバックでは、東証プライム上場のアイフルのグループ会社が運営しており、安心して利用できます。
基本的に居住期間に制限のない普通借家契約を締結しており、住み慣れたご自宅で生活を続けることが可能です(定期借家契約も可能)。また、賃貸借契約中でも、ご希望に応じて買い戻しもできます。
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- 監修者:新井 智美
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- コンサルタントとして個人向け相談(資産運用・保険診断・税金相談・相続対策・家計診断・ローン・住宅購入のアドバイス)のほか、資産運用など上記相談内容にまつわるセミナー講師(企業向け・サークル、団体向け)をおこなうと同時に、金融メディアへの執筆及び監修にも携わっている。現在年間300本以上の執筆及び監修をこなしており、これまでの執筆及び監修実績は2,500本を超える。
- 資格情報:
- CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
- HP:https://marron-financial.com/